ご主人 小森明さん(1964年生まれ)
大阪・北新地の小料理「こもり」です。
まずは、ある日のメニューをじっくりご覧下さい。
小料理「こもり」という店名から、和食を想像しますが、洋食系のメニューが中心です。
「新作ブラック焼きそば」
「禁断のカルボナーラ」
「幻のハンバーグ 目玉焼きのせ」
など、ネーミングも面白く、気になるメニューがたくさんあります。
たまごかけご飯といえば、朝食のイメージが強いですが、
「深夜に、たまごかけご飯が食べられる。」
「こもり」は、深夜2時ラストオーダーのお店なので、「深夜食堂」のように、
深夜にこのメニュー表に載っているもの、すべて食べられます。
北新地や、飲み屋街で酔客の〆は、うどん、そば、ラーメンと言う場合が
多いでしょうが、たまごかけご飯を〆にできるとは、珍しい。
「魔法のたまごかけご飯」は880円と、ちょっと良い値段ですが…。
その値段の秘密は…
写真では、ちょっとわかりにくいですが、
卵黄×白身のメレンゲ×トリュフ
という、たまごかけご飯なのです。(日々、たまごかけご飯は、味つけや中身が進化しています…)
この「魔法のたまごかけご飯」について、改めて考えてみましょう。
たまごかけご飯という、日常食と、非日常の食材、トリュフ。
つまり、
日常×非日常=日常メニューのバージョンアップ化、エンターテイメント化
もともと、食べ親しんでるメニューを、高級食材や、新しい味の組み合わせで、バージョンアップさせる。
食べ手は、でてきたとき、あっと驚きます。
もう一度、メニュー表をご覧下さい。
たとえば、「五郎島金時とゴルゴンゾーラのポテトサラダ」
(写真)ポテトサラダ(日常)×ゴルゴンゾーラ(非日常)
盛りつけも斬新。黒いのは、バルサミコ酢。
ポテトサラダに、なんとゴルゴンゾーラチーズを混ぜあわせています。
旨味たっぷり、より濃厚な味で、ビスケットやフルーツを使って立体的に盛りつけています。
別の日のメニュー、イワシの素麺は、素麺にオリーブオイルをあわせたもので、
素麺(日常)×オリーブオイル(非日常)
イワシが載っているのも、インパクト大ですが、素麺をオリーブオイルとあわせる。なかなかありません。
まさにパスタのようですが、実際、素麺は、デュラム小麦を使い、手延べの技術を生かして作った
「手延べパスタめん」という、奈良県の老舗素麺店「三輪そうめん山本」のものだそうです。
たまごかけご飯、ポテトサラダ、素麺…
ふだん食べ慣れている料理だからこそ、変化、進化を見ると、驚きます。(プチサプライズ)
ブルゴーニュワイン専門である。
シャンパンとビールは置いていますが、ワインはブルゴーニュワインだけしか置いていません。
グラスでも飲めますし、リーズナブルな料金設定です。
ワインの産地をあえて絞る。
ブルゴーニュワイン好きが、確実に集まってきます。
単なる「ワインが飲める店」は、星の数ほどありますが、「ブルゴーニュワインしかない店」は、
そうそうないので、ワインバー特集を組むとき、マスコミ、特に雑誌は、喜びます。
見出しを打ちやすいからです。
ちなみに、小森さんは、ソムリエの資格もお持ちです。
隠れ家的ロケーションにある。
北新地のメインストリート、本通りに面していながら、
いまどきエレベーターがなく、階段しかない雑居ビルの3階にあります。
階段を上がるとき、「隠れ家」的感覚を味わえ、誰かを連れて行き場合、
自分だけが知っている…というちょっとした優越感を味わえます。
こういうロケーションは、テレビ向き、雑誌向きです。
女性は、隠れ家的ロケーション、路地奧の店が大好きです。
テレビや雑誌で、よく見る特集は…
「隠れ家的名店」
「路地裏の名店」
「街の達人に聞いた…穴場名店」などです。
「ソース2度漬けごめん」の串カツ(メニューは日によって違います)
大阪名物のひとつに、「ソース2度漬け禁止」の串カツがあります。
新世界や、梅田の地下街などには、1本100円くらいから食べられる激安串カツ店が、多々あります。
ソースは、大きな入れものに入っていて、他の客と共有します。
だから、食べさしを2度漬けてはいけない。ソース2度漬け禁止なのです。
「うちの串カツも、ソース2度漬け禁止です。お客様同士、ソースは、共有でお願いします」
小森さん、実は、和食の修業のあと、ワインを飲める創作串カツ店をまかされていたことがあり、
言わば、串カツは本職です。
本来なら、いろいろ趣向をこらした、串カツを出したくなるところ、串カツは、このシンプルな豚の「串カツ」だけ。
そして、ソース2度漬けごめんの、激安店のフォーマットを使いつつ、
最近は、超高級オリーブオイルをあわせた油で、ブランド豚を揚げる。
これまた、
大阪名物のバージョンアップ化、エンターテイメント化です。
この串カツ、「カハラ」の森さんが、3度おかわりしたという、
(横にいましたので、僕が目撃者です)いまやスペシャリテとなっています。
「こもり」のまとめ
「魔法のたまごかけごはん」に代表されるように、ふだん食べ慣れている「日常メニュー」をバージョンアップ、エンターテイメント化させたメニュー構成で、ブルゴーニュワインに特化した「深夜食堂」であること。